レプトスピラ症
人獣共通感染症で法的には届出伝染病に含まれている細菌(一般的な細菌とは性質が少し異なります)感染症です。人を含む多くの哺乳類が感染します。犬が感染した場合、急性腎不全や急性肝不全の症状を起こし、死亡率の高い病気です。人では軽症から重症まで多様な症状を示します。
レプトスピラは動物の腎臓に定着することから、感染した動物は尿中にレプトスピラを長期間(数か月から生涯)排泄します。動物や人はレプトスピラを含む尿との直接的な接触や、尿によって汚染された水や土壌を介して経皮的・経口的に感染します。野生動物やげっ歯類(特にネズミ)はレプトスピラのキャリア(発症はしないがレプトスピラを排泄し保菌状態になること)となり、伝播に深く関わります。
診断は病原体の分離や遺伝子検査などありますが、血清学的検査は臨床症状と合わせて最も実用的に行われている方法です。治療は抗菌薬でレプトスピラを排除するとともに、急性腎不全や急性肝不全に対する対症療法も行います。レプトスピラには様々な血清型があり、ワクチンですべての血清型の異なるレプトスピラの感染は予防出来ないと考えられています。しかしワクチン接種は血清型が合えばレプトスピラ症の発症阻止と症状軽減に効果があることから、流行地ではワクチン接種が推奨されています。ワクチンを接種する場合、免疫持続期間が通常のワクチンより短いため(3~8か月)、流行地では頻繁なワクチン接種が必要と考えられています。また、レプトスピラの保菌動物になりやすいネズミ類の駆除や接触防止も重要です。感染した犬は、回復後も尿中にレプトスピラの排泄があるため、他の犬とは隔離し、飼育場所や器具は消毒する必要があります。人獣共通感染症であることから、感染している恐れのある犬と接触する場合はゴム手袋などを着用し、厳格な衛生管理が必要です。レプトスピラは熱や乾燥に弱く、ほとんどの消毒薬が有効です(塩素、ヨード剤、逆性石鹸)。
*ワンちゃんを連れてキャンプやアウトドアを楽しむ機会が多い、長期の休みはワンちゃんを連れて田舎に帰省する、または環境周辺にネズミが多い、など当てはまる項目があればレプトスピラの予防について動物病院にご相談してみてください。